あの夜から数週間。
クライフと名乗る男と出会った夜。少女――ユウキの運命が変わった夜。
少女の腕に光る『環』が変えた夜。
その夜からしばらく経ち、二日に一回ほどのペースでユウキは世間が眠りにつく時間にクライフから魔法を教わっていた。
クライフが放り投げた風船。
それが数メートル離れた少女の手のひらから生まれ出た火弾に当たり爆ぜる。
「次!」
クライフの声、合わせてユウキに火弾を放つ。
「それならっ!」
ユウキは両手を叩き左の手をそれに合わせ伸ばす。突風。
その手の先から風が生まれ、回り火弾を切り裂いた。
「おーけーおーけー、上出来上出来」
嬉しそうにクライフは拍手をならし、その結果に満足げだ。
「その『環』の平常状態の使い方は慣れたみたいだね」
じゃあ、と前置きを置いてクライフ。
「そろそろ、全身で試してみようか」
クライフと名乗る男と出会った夜。少女――ユウキの運命が変わった夜。
少女の腕に光る『環』が変えた夜。
その夜からしばらく経ち、二日に一回ほどのペースでユウキは世間が眠りにつく時間にクライフから魔法を教わっていた。
クライフが放り投げた風船。
それが数メートル離れた少女の手のひらから生まれ出た火弾に当たり爆ぜる。
「次!」
クライフの声、合わせてユウキに火弾を放つ。
「それならっ!」
ユウキは両手を叩き左の手をそれに合わせ伸ばす。突風。
その手の先から風が生まれ、回り火弾を切り裂いた。
「おーけーおーけー、上出来上出来」
嬉しそうにクライフは拍手をならし、その結果に満足げだ。
「その『環』の平常状態の使い方は慣れたみたいだね」
じゃあ、と前置きを置いてクライフ。
「そろそろ、全身で試してみようか」
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ぼんやりと明るくなり始めた空を片目にして、布団の中の少女は腕を伸ばす。
「う……」
鐘の間を行き交い音をあげる目覚まし、それを停止させようと頭まで布団をかぶりながらも音の方へ腕を伸ばし、停める。
「もう……朝かぁ」
手が入りそうなほどに大きく開けた口に、半分起きていない意識を起こすように眼をこすりベッドの上へ腰かける。
窓の外にうっすらと積もり、まだちらりちらりと降り注いでいる雪。それを見つめつつ身体に火が灯るのを待ちながら彼女自身に起きた事。
数ヶ月前の彼女に降り注いだ事件をふと思い返していた。
「まだ眠いぃ……やっぱあんなこと、引き受けなけりゃよかったかなぁ……ぁふ」
その手首に光る『環』を弾き、少女は過去の記憶へと思いをはせた。