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2010/7より開始。 週に一回ぐらいゲームの感想とか雑談とか雑談とか小説とか雑談を書いていきたい。
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 その目に映るものは既にうすぼんやりと、音も全てがさざ波のようで、何もかもが夢の世界の事のように見えた。
 だが、全て現実。胸部からの痛みとそこから漂ってくる鉄の匂いを伴う血潮がそれを教えてくれていた。
 霞んだ景色でもそこかしこの建物が崩れて炎を噴き出しているのをはっきりと聞きとり、全ての音が遠く聞こえる耳でも悲鳴と泣き声、怨嗟の音ははっきりと映っている。
『                               』
 瞳に映っているのか、それとも記憶から景色を想像しているのかはその男には分からなかい。
 しかし自分の頭が誰かに抱きかかえられている。今、それだけが確実なことであった。
 守り切れなかったかな。男は遠くなる意識でそう想う。
『           』
 何かを話している。もう言葉が言葉として理解できない。答えるわけではなかったが男は、言葉を出そうと唇を動かして。
『――――――――――――――――』
 頬に熱いものが当たる。もう感覚は無いのにそこだけが熱かった。
(泣くなよ……バカ)
『 』
 叫んでいる。頭を抱きかかえられる。もう全てに力が入らない。恐怖はない。ただ眠りに入るように最後は近づいて、消え逝く意識の中、オーロラの風がそこに吹いていた。

 


 そこで目が覚めた。既に半分以上は夢の内容を忘れていた。窓からは朝日が入り込み、晴天がカーテンの隙間からでも分かった。
 変な夢だった、と思いながらも枕元にある時計に手を伸ばし、時間を確認する。6時半。30分ぐらい眠れるかと、布団に戻り再び眠りにつこうとした時、携帯の着信がそれを阻んだ。液晶には、見覚えのある名前――二子島、と表示されている。
「こんな朝からなんだよ、二子島……」
『ちょっと、また寝ぼけてるのかい? もう間に合わなくなるよ。わっしがわざわざ電話したのに遅刻したら面白すぎるよ?』
 何かおかしい、再度時計に視線を巡らす。確かに6時半。秒針がストライキしている。
「……今、何時だ?」
『8時半、ちょっと前』
 遅刻の足音が聞こえてきた気がした。


極光学園ものがたり
第一話 学園生活 開幕!

つづきを読むから続き!

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 走る、駆ける、全力で。
 時計が止まっていたことに気付かされた男は、怒涛の勢いで着替えを済ませ学び屋への道を急いでいた。
 幸いだったのは彼が通っている学校が、制服私服両用可だった事――正式行事の時以外は自由な服装が許可されていた――ので多少ラフな服装でも通じるところだった。
 既に学校は見え始めている。歩けば20分少々、走れば半分ぐらいにはなる距離だと言うのも幸運の一つだったのかもしれない。
 次を曲がれば、50分までには間に合う。センセがちょっと遅れれば問題はない。
 そう考え、角に差し掛かった時に目の前に人影があるのにも気づいた。全速力で走っていたので、回避もできず正面衝突に近い形でぶつかる。相手方はかなり小さく、男より一回りは小さく見えた。男はよろめくだけで済んだが相手――金髪の、白い長そでブラウスに赤いスカートをはいた少女――は尻もちをついて恨めしそうに睨んでいる。
 座りこんでしまっている少女に手を伸ばすと「ちょっと、何さ!」と言う、明らかに不満の声。「ほら、つかまれ」手を引っ込めようかとも思ったが礼儀として伸ばす。
 少女は手を借りて立ち上がる。「前も見ないで何やってんだか」スカートについた汚れを払い落しながら「ありがとう」
 それでも目はジロリと男を見つめていた。値踏みするかのようにも感じられた。すると、急に思い出したかのように。
「……っと、こんな事をしている場合じゃないよ。今度から気をつけてよね!」言って駆けだす。
 お互いさまじゃないか。男はそう想うも自分にも時間がない事を思い出し、遠くでチャイムが響くのを聞いた。

 

 


 極光学園、二階。二年三組教室。窓際からはグラウンドが良く見える。空は青く、雲は白い。
 息を切らせながら教室に飛び込んだ男に、少しの間注目が集まったがすぐに会話や携帯電話いじりを再開した。
「よ、遅かったな。銃司」
 目覚ましが止まると言う非常事態を乗り越えた男、千導 銃司は椅子に腰かけて呼びかけられた。隣の席から田中がぷらぷらと手を振っている。
「あ、よかったよかった。間に合ったんだ」千導に電話をかけた人物――二子島 薙だ。
 この二人は千導の特に親しいクラスメートであり、友人でもある。
 田中とは、中学入学の時に出会い最初のクラスで席が近かったというのもありそれ以来の付き合いを数えている。
 もう一人の二子島 薙という人物はこの学校に入ってから知り合った。それと言うのも中学時代は校区分けで別れてしまっていた田中との幼馴染であるのだが、二人は幼いころは互いの家とかに行き遊んでた名残がそのまま残り、中学時は少し疎遠になったがこの学校で再開していた。
 そんな田中の橋渡しもあり、千導はクラスの女子の中では一番二子島と仲が深かった。
「ああ、なんとかな。電話がなかったら不味かったかも知れなかった。ありがとな、二子島」
「いやいや、わっしの溢れる友情がそうさせたのよ」「ところでセンセがまだ来てないしこれは何だろな……」千導が指をさす。その先には先日までなかった机と椅子一式が置いてあった。
「そりゃあ、アレだ。転校生だよ。昨日先生に頼まれてそれ運んだの俺だし」なるほど、と千導は思った。クラスのそこかしこでそのような話題が上がっている。
 しかし、ホームルームの時間が始まっていると言うのに先生が来ないことの理由にはならない。
「ほんとにね。先生どうしたんだろう」
「どっかの誰かみたいに寝坊て事はないだろうしねぇ」二人の視線が千導に向く。千導はその二人から顔を背け、 正面にカレンダーが目に入った。五月の末が近い。もうすぐ暑くなるころだろう。
「済まない、遅れた。急いでホームルームをやるぞ」慌て気味に教室に担任が入ってくる。「まぁ、何となくは伝わってるようだな」
 担任は、千導の先ほど指差した机一式をちらり、と見て「転校生を紹介する」あっさりと言う。「入ってきなさい」
「はい」よく通る声だった。黒い髪をなびかせて担任の横に立ち、一礼。担任の目配せに頷いて「シュベルタ=A=サウザーウンドと言います。家の事情で本日よりこちらのガッコウに通わせていただくことになりました。お見知りおきをお願いします」
 多少珍妙な言葉選びだったが、クラスは拍手でその転校生を歓迎した。
 だが、千導は不思議な感覚に囚われている。初めて会ったはずなのにそうではない。しかもすぐ最近に会った気がしてならない。
 無遠慮にその転校生の顔を見ていると、その黒目がちの彼女の目が合った。にこりとしてサウザーウンドは微笑んだ。

 

 


 転校生が来ると言う珍しい一日はあっという間に過ぎ、千導はカバンに教科書を詰め込んでいると声がかけられた。
「イイですか?」サウザーウンドだった。
「あ、はい」
「一緒にこの学校の案内をお願いしてもいいですか?」言葉を失った。「や、わっしだけでも良いかな、って思ったけど一人より二人の方がいいかなってね」その後ろには二子島で。「中途半端な時期だけど部活に入るならその説明もしておけって先生も行ってたし」
「田中とか他の女子はどうしたんだよ。女の娘案内するなら、女の子同士の方がいいんじゃないのか?」
「誘ったんだけど、田中は野球部にどうしても出なくちゃなんないって言うし他の子もなんか外せない用事あるんだって」
「そうなんです。だから二子島さんのお勧めでアナタにお願いしたいです」
「……まぁ、手伝ってくれなきゃ一人でも良いんだけどさ。――――部長さんの所に行ってあることあること話しちゃうかもしれないなぁ」
 部長。その言葉を出されてしまうと千導は、弱い。所属している部の部長、ただそれだけである。だが、しかし校内においては常に一目置かれている人物でもある。
「分かった、やればいいんだろ?」「やぁ、千導は優しくてわっしは……す、……嬉しいよ」
「ところで」サウザーウンド。
「お名前、聞いてもいいですか? 世話になる方のお名前は知っておきたいです」
「千導、千導銃司」
「良いお名前です」やはりサウザーウンドはにこりと微笑む。暖かい笑顔だと千導は感じた。

 

 

 学校の中でもグランドの外れにある後者から離れた建物。
 野球部、サッカー部、マラソン部、その他多くの運動系と呼ばれる部は主にそちらの通称部室棟と呼ばれるところに集まっていた。
 対照的に、校内には新聞部、科学部、写真部、いわゆる文科系と呼ばれる部活が主に特別教室や空き教室を部室として使用している。
 小一時間ほど学校の案内をサウザーウンドにした千導と二子島は最後に、と言うことで千導が所属している部活を足を運んでいた。
 ノックをして千導がドアを開ける。「入りまーす――うわっ!?」
 目の前に紙飛行機が飛んでくる。思わず手を払いそれを落とす。「よう、銃司」
 部室の、よく陽の入る窓際に一際大きな机の上に座っている紙飛行機を投げた張本人は何もなかったかのように銃司へと挨拶を向ける。
 その人物はサウザーウンドに目をやり「薙は分かるとして誰だ、そっちは」と問いかける。「ワタシはシュベルタ=A=サウザーウンド。今日この学校に転入して、この二子島さんと千導サンに案内してもらった者です」
「ふぅん」
「それでここは何部なのですか?」サウザーウンドが不思議そうに千導に。それもそのはず、ここに来るまでの道程、他の部は部室の扉付近に必ず部名を記入したプレートやそれに類するもの。あるいは歩きながら千導と二子島が部活の説明をしていたのに、この部に至ってはプレートも案内役の二人からの説明も無かったからだ。
 この部室の中に目を回しても、ツルハシやスコップ、冷蔵庫、望遠鏡、テレビ、ゲーム機、パソコンその他諸々置いてあるものにはまとまりも見られず、それでかつ今まで見てきた部室の中でも一番の広さ――おおよそ普通の教室二部屋分。
「ここは――」千導の言葉をさえぎるように「この部活はオレの思うままに好きな事をやりたい放題やる部活だ!」
「で、あちらがこの部活の部長さん」二子島が付け加える。
「よろしく」片手を振りながらのあいさつ。「ま、部長って呼んでくれ」
「お名前は……?」
「いいんだってよ。この出鱈目な人は少なくともこの学校ではその呼び名で通じるんだから」
 そうだ、この『部長』という人物はこの学園内で部長と言えばこの人物を差す。この部長が所属する三年でも、千導たちの二年でも。新入生たちですら既に浸透している。果ては教師達にまでも。
「それでは、改めてよろしくお願いします。部長殿」「おう」
 二子島が立ち話もなんだし「サウちゃんこっちこっち」とサウザーウンドに椅子を勧め千導はカバンを適当なところに置く。
 その時、廊下を走る音が近づき少々乱暴に部室のドアが開く。「部長、なんですかこの請求書は!」
「天体望遠鏡の新作とオレの茶とゲーム代」「ふざけないでください、学校が認めるわけないでしょう!」
「校長なら許してくれるだろ」「会長の方です!」
 部長と厚い口論を交わす少女。千導と二子島は見慣れてしまっているが本日の客人はそうではない。
「この国の……お寺の人ですカ?」その娘の服装に目をやる。靴こそは校内スニーカーだがまず目を引くのはその鮮やかな緋色のズボンタイプの袴。そしてそれに反するかのように上半身は真白い襦袢を身に纏っていた。
「神社の方だな、あの娘は」
 その娘は九十九 小奈多。『部長』が支配する部で、ついこの間入学したばかりだと言うのに会計の役目を追っていた。詳しく言うとやる破目になった、だったが。部長と千導の後輩である。
「って、お客さんですか。こんな恥ずかしいところを見せてしまって」九十九は一通り部長に文句を吐きだした後、二子島、サウザーウンドに気付き軽く一礼。
「初めまして、私は九十九 小奈多と言います」と一通りの面通しを済ませ「九十九さんもこの……何部でしたかの方ですか?」
「そうです、部長あたりはまともに説明してないでしょうけど正式には天体観測部です。部でいられるかも怪しいですけど」
九十九が肩を落とす。「それより部長。部員が足りないから部として認められないって生徒会、会長が言ってます」

「二子島さん、部の条件って?」「ああ、正式には五人以上の部活と顧問が部活には必要だってのがこの学校の決まりらしいの。でもどっちか足りなかったら同好会って形にはなるんだけどね」
「新しい会長、ウチの部長とは反りが合わないらしくてな。最近殊更九十九ちゃんが文句言われてるらしい」千導がぼやく。九十九が言う愚痴にも慣れてきている。「わっしは部員じゃないしねぇ」「そうなんです?」「そうなのです」
「ま、シュベルタ?」部長だ。九十九の苦情を受け流して三人で話していた所に飛び込む。
「なんでしょうか」「俺の眼鏡にかかったら、この部活に入ってもいいからな」
「そんなこと言ってるから――」九十九が文句の一つでも言ってやろうかとした時。新聞紙を丸めて、剣の形にした男が窓から入り込む。「今日こそ貴女に!!」
 誰もそのような所からこんな事をするはずもない。そう思っていた。だがその闖入者は事もなげにやっていた。
 だが部長は事も無げにくるりと身をひねって窓から飛び込んできた乱入者の面前に九十九を突きだすと同時に「発想は悪くない、ぞ」足で闖入者の顎を軽く打つ。
「あ」かくりと首が落ちそれに合わせるかのように膝から崩れ落ちた。「千導。廊下に座らせといてくれ」
 言われた通り千導は闖入者を廊下へと引っ張り出す。確か三年の緑川と言ったか。千導が昨年入部させられた時点からこのような事を繰り返していたから印象にも残っていた。
 指示に従い部室に戻った時、千導以外の四人が既に打ち解け会話をしていた。
「ところでこの部というか、部長さんの眼鏡にかかるというは?」聞きそびれていた事をサウザーウンド。
「とりあえず、オレに一撃加えるかオレが認めた奴だな。な、千導。九十九」
「まったくもって、迷惑な話ですが。ええ、本当に迷惑です」とごちる九十九に答えるように部長「その割には割と来てくれるから九十九、好きだぞ」
「それじゃあジュージさんは?」サウザーウンドが疑問を口にする。二子島はにやにやしていた、くそっ。
「スカウトされたんだよ……部長に」ため息一つ千導は答えていた。

 


「今日は案内アリガトございました」
「ん、そんなに堅苦しくなくていいって、もう他人じゃないんだよ。ね、千導?」
「そうだな、今日からはクラスメイトなんだし楽な話し方でな」
 日が長くなっているのを感じる。学校の案内を終え、分からない事はその都度ということにして二子島と千導、そしてサウザーウンドは今日は引き揚げる事にしていた。
「お、じゃーな!千導!二子島!サウザーウンドさーん!」グラウンドの端から田中の声。日を反射するバットを思い切り振っていた。
「おーう」「また明日ねー」「また明日」
 まだ部活が続いている田中に別れのあいさつ。そのまま他愛のない会話が交わされながら家路の足は進む。
「そういえばセンセ、朝えらい遅かったみたいだな。そのおかげで遅刻取られずに済んだけど」
「言われてみればそうだねぇ。サウちゃん来るって知ってたらそれに合わせて時間合わせそうなんだけどナナ先生は」
 千導と二子島、二人は首をかしげる。彼らの担任の先生は時間ごとはきっちり計り遅れることがほとんどなかった。
「きっと、それは、ワタシのせいだと……」サウザーウンド、恥ずかしげな挙手、照れ笑いもあった「ワタシが道に迷って約束の時間に遅れてしまったから」
「サウちゃんって何処に住んでるの?」
「えー、と。その、デスね…………」
「ああ、そっか」なにか気づいたみたいに二子島は頷き「引っ越してきたばかりだから、番地とかよくわかってないんだね?」
「はい。そうなのです」恥ずかしそうに頬を染めていた。照れ笑い「それで今日は道に迷って、妹に送ってもらたんです」
 新鮮だ。千導はそう思っていた。今までにないタイプの女の娘。何となく気にかかる、その気持ちがあった。
「――千導?」
 気が飛んでいた、二子島がそんな千導を覗き込んでいる。
「ああ、どした?」
「どしたじゃないよ。そういうことならサウちゃんに学校の近所も色々教えてあげるよって話だよ」
「ご教授お願いしまする」
「そうか、まぁ確かにこの街は事欠かないからな」
 夏になると花火が良く見え、ボートも楽しめる公園。ちょっと足を延ばせば学校帰りにも行ける駅前の商店街。学校の裏の山の中の古めかしいお屋敷。
「オヤシキですか……?」
「そ、お化け屋敷」二子島は説明を続ける「幽霊出るとか、頑張ってそこ行こうとしても行けないとか変な人がいるとか噂なんだけどだれも見たことが無い場所。わっしも昔、田中と行こうとしたんだけど行けなかったんだよね」
「お前の学校も似たような事してたんだな。俺も小学校の時友達と行こうとしたんだけどどうしても行けなくてな。父さん母さんに聞いても似たようなことしてって言ってた」「あ、わっしのお母さんたちも」
 共通の話に花を咲かせる。「楽しそうですね」そんな様子をみてサウザーウンドは優しげに微笑んでいた。
「今なら行けるかもな」「そうだね。そうだ今度行こうよ! サウちゃんも一緒に、田中も誘って」
「いいんですか、ワタシも?」
「もちろんだって!」二子島は満面の笑み。

「おねーちゃーん!」そんな会話に元気そうな声が飛び込んできた。その声にサウザーウンドが反応する「あ、この声」
 少しして、小柄な影が千導たちの前に現れる。金の髪は日に浴びて紅く輝き、その小さい肩は息を整えるために息を整えるため激しく上下していた。
「せー。迎えに来てくれたの?」「ハァ……だってお姉ちゃん、朝みたいに西って言って太陽の昇る方に行かれても困るもん」
「「え……?」」方向音痴。そんな言葉が浮かんだが二人は口には出さない。
 サウザーウンドの妹、初めて会ったはずなのだがそうではない。既にどこかで会っている、見知っている。千導はそのような感情を持っていた。
「お姉ちゃんこの学校に送ってから急いでボクも学校行ったけど遅れちゃった。その前にも、変な男の人ともぶつかっちゃって痛かったんだから」
「もう、せーは慌てん坊だから」
「ねぇ、サウちゃん?」二子島は続けて「その妹さん?紹介してもらってもいい?」
 にこにこと二子島はサウザーウンドの妹に笑顔を見せる。
「お姉ちゃんの友達?」二子島と千導に向けられる深い青色の瞳「そうです。二子島さんです。で、コチラが……」
「「ああああああ!!」」記憶が結び付いた。千導とサウザーウンドの妹。同じ思いがあったのだろう。
「朝の男!」「朝の子供!」どちらが早いか声を出していた。その様子を二子島とサウザーウンドは驚いたように見ている。
「知り合いだったの、せー?」「知り合いなんかじゃないよ、朝ぶつかったってだけ。前も見ないで走ってたんだよ、この男」
 そりゃあアンタが悪い、そう言いたげな二子島の視線が千導に向かう。「いや、ちょっと待て曲がり角だったし、五十歩引いてもお互いさまじゃないのか?」
「違うよ!こういうときはれでぃーふぁーすとでしょうが。ボクなんて尻もちまでついたんだから」
「まま、二人とも落ち着いて。妹さん?」長くなりそうだと感じたのか二子島が間に入り「わっしは二子島、二子島 薙。んでこっちが千導 銃司」
 自己紹介を済まさせてしまう。
「二子島ナギおねえさんに、ジューシー?」
「誰がジューシーだ。じゅうじだじゅうじ!」
「あんたなんかジューシーで十分でしょ?」にやにやとサウザーウンドの妹はしている。この娘とはウマが合わない。しかも本能的にだ。どうしても動物に触れない。どうしても生物が食べられない、高い所から下を見下ろしたくない。感情の底から生まれ出る物に近い思いだ。千導はそう感じていた。
「せー?」悪びれなく言うサウザーウンドの妹に、その姉「そんな口を利いたらダメだって言ってるでしょ。それに二子島さんと千導さんに自己紹介もしないで」
「ご、ごめんなさい。お姉ちゃん、銃司」呼び捨てか、だがそれぐらいで腹を立てるほど千導の堪忍袋は短くなかった。
「じゃあ改めて……ボクの名前は百地 星刃。お姉ちゃんともどもお願いします」ぺこりと頭を下げた。その時はつい先ほどの生意気さは鳴りを潜めている。
「ももち せいばちゃんかよろしく」二子島も改めて笑顔「なんか分かんない事とかあったら何でも聞いてね?」
「……ヨロシク」千導は社交辞令の挨拶。
 そこからは星刃を入れた4人での帰宅路。女の娘三人に黒が一人、居心地の悪い思いを感じながらも歩く。
「じゃあ明日からもヨロシクお願いしますね。二子島さん千導さん」「バイバイ二子島お姉ちゃん、銃司」十分ぐらいでサウザーウンド姉妹とは道が違うと言うことで別れ、少し歩くと二子島との別れ道。「今日はサウちゃんや星刃ちゃんと友達になれて面白かったね? また明日、千導」
 一人で道を歩く。朝、夢を見たことなど千導は既に忘れていた。そうか、サウザーウンドに見覚えがあったのは朝、星刃に会っていたから、と。言われてみれば顔のつくりが良く似ていた。ぱっと見で違うのはサウザーウンドが黒髪で星刃が金髪。あとは年齢、日記に書くことがまたできたな、ひとりごちる。寝る前に、目覚ましの電池を変えておかないといけない。
 日は少しずつ長くなっていた。夏は少しづつ近づいている。

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